「主体性のある営業を求めています」——求人票でも面接でも、当たり前のように出てくる言葉です。
一方で、こう感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
- 自分に主体性があるのか、正直よく分からない
- 言われたことは人一倍やってきた。でもそれは「主体性」と呼べるのか
- 面接で「主体性を発揮した経験は?」と聞かれ、答えに詰まった
結論から言うと、営業の「主体性」は、しばしば別の3つの能力と混同されています。そして混同されたまま採用も転職もアピールも行われることが、ミスマッチの温床になっている、と私は考えています。
この記事では、法人営業(B2B営業)の文脈で「主体性」が何を指すのかを分解し、自分がどちらのタイプなのかを事実ベースで確かめる方法まで整理します。
営業の「主体性」の定義:指示がなくても自分で課題を見つけて動く力
まず定義をはっきりさせます。営業における主体性——当サイト「営業の通信簿」では自走力・主体性と呼んでいますが、その中身は次の一点です。
指示がなくても、自分で課題を見つけて動く(↔ 指示待ち)
ポイントは「見つける」と「動く」の両方が入っていることです。
- 「数字が落ちている原因はこれではないか」と自分で仮説を立てる
- 誰に言われるでもなく、その改善策を実行する
- 与えられた役割の外側にも、自分から踏み出す
逆に、指示された内容を完璧にこなすことは——それがどれほど高いレベルであっても——この定義上の主体性ではありません。ここが重要なところです。
混同されやすい4つの能力:「気合いがある」は4つの別物の混合体
私が最も問題だと考えているのは、「気合いがある」「熱量がある」という言葉で、まったく別の4つの能力が1つにまとめられてしまうことです。精神論そのものを否定はしませんが、分解しない精神論は害になると考えています。
営業の現場で「あの人は気合いがある」と言われるとき、実際には次の4つのどれか(あるいは複数)を指しています。
| 混同されがちな能力 | 中身 | 一言でいうと |
|---|---|---|
| 目標達成意欲(グリット) | KPIを何としても達成する執着・やり切る力 | 数字への執念 |
| ストレス耐性・打たれ強さ | 拒絶・プレッシャー・きつい環境への精神的タフさ | 折れにくさ |
| 自走力・主体性 | 指示がなくても自分で課題を見つけ動く | 自分で始められるか |
| 行動量・推進力 | 与えられた瞬間の実行スピード・量 | 決まった後の速さ・量 |
この4つは、まったく別の能力です。そして——ここが本題ですが——別々に高低がありえます。
「主体性がない」のではなく「行動量が武器」の人がいる
一番わかりやすいのが、行動量・推進力が高く、自走力・主体性は平均的という組み合わせです。
このタイプの人は、やることが決まった瞬間にギアが上がります。指示が出てから動き出すまでが速く、同じ時間で周囲より多くの接触をこなす。決まったことを最速で形にする力が突出しています。
一方で、「何をやるか」を自分でゼロから設計する場面では、そこまで前に出ない。だから「主体性がない」と評価されてしまうことがあります。
私は、この評価の仕方に無理があると考えています。「自走力がない=ダメ」ではありません。 指示があれば誰より頑張る人は実在しますし、組織によっては最高の戦力です。売る型がすでに確立されていて、実行量が成果に直結するフェーズなら、このタイプが最も数字を作ります。
問題は能力の高低ではなく、その人がどのタイプで、どの環境に置かれるかの組み合わせです。
打たれ強さと主体性も、別物
もう一つ混同されやすいのが、ストレス耐性・打たれ強さです。
厳しい初回反応が続く環境でも消耗せず、出来事として受け止めてすぐ次に切り替えられる——これは確かに強い武器です。ただ、これは「耐える力」であって、「自分で課題を見つけて動く力」とは別の軸にあります。
打たれ強い人が必ずしも自走するわけではなく、自走する人が必ずしも打たれ強いわけでもない。両者はしばしばセットで語られますが、分けて見たほうが自分の実態に近づけます。
なぜ分解が必要なのか:ミスマッチはこの取り違えで起きる
ここまで細かく分ける理由は、転職のミスマッチがこの取り違えで起きているからです。
典型的なのが、自走を前提とした組織に、「指示があれば超頑張る人」が入ってしまうケースです。
立ち上げ期のスタートアップのように、売り方そのものを自分で発明しなければならない環境では、「何をやるか」の設計が仕事の大半を占めます。そこに、実行力は抜群だが自分で課題設定をするタイプではない人が入ると、双方が不幸になります。本人は「指示がない」と戸惑い、組織は「思ったより動かない」と感じる。どちらも悪くないのに、噛み合わない。
逆のケースもあります。型が固まった組織に、自分で課題を見つけて動きたい人が入ると、「余計なことをするな」と抑えられて窮屈になる。
「営業」とひと括りにすることは、求人・採用の都合上ある程度は仕方ないことだと思っています。ただそのせいで、求人側と求職者側の双方が判断材料を持てないまま、相性の悪い組み合わせが生まれてしまう。強みも、活躍できる環境も、人によって全く違うからです。
自分に主体性があるかを「事実」で確かめる3つの質問
では、自分がどちらなのかをどう確かめればいいのか。
ここで避けたいのは、「自分は主体性があると思いますか?」と自問することです。気持ち・自己イメージで測ろうとすると、ほぼ当たりません。 自己評価は、高く出る人も低く出る人もいて、実態とずれます。
代わりに、過去の事実・行動を思い出してください。以下の3つは、自走力と行動量を切り分けるための質問です。
質問1:直近1年で、誰にも指示されずに始めて、実行まで持っていったことは何か
「気づいた」「提案した」で止まっているものは、いったん除きます。自分で課題を見つけ、実行し、何らかの結果まで到達したものがあるかどうか。1つでも具体的に挙げられるなら、自走力は実際に発揮されています。
思い出せない場合、それは能力が低いという意味ではなく、そういう機会が少ない環境にいた可能性も十分あります。
質問2:やることが決まった後、周囲と比べて速さや量で違いを出せた場面はあるか
こちらに具体例が豊富に出てくるなら、行動量・推進力が武器である可能性が高いです。「アポ数が突出していた」「決まったら誰より早く着手していた」——これは立派な強みであり、隠す必要はまったくありません。
質問3:役割の外側に踏み出した経験はあるか
自分の担当範囲ではないのに、必要だと判断して手を出したこと。他部署を巻き込んだこと。ここに事実があるなら、自走力の裏づけになります。
面接・職務経歴書での伝え方
自己PRで「主体性があります」と書いても、採用側にはほぼ何も伝わりません。同じ文言を全員が書いているからです。
私が有効だと考えているのは、上の質問1に対する事実をそのまま書くことです。
「担当外だが◯◯という課題に気づき、△△を自分で設計して実行し、□□という結果になった」
この形であれば、主体性という言葉を一度も使わずに主体性を証明できます。逆に、行動量が武器の人が無理に主体性を装う必要もありません。「決まったことを最速・最大量で実行する」ことを事実で示せば、それを求めている組織には強く刺さります。
そしてもう一つ。自己PRは「書く」ものではなく、「過去の行動から掘り出す」ものだと私は考えています。白紙から書こうとするから手が止まる。まず過去の行動を事実として並べ、意味づけは後からで構いません。この順番を逆にしている人が多い印象です。
自分がどのタイプかを20軸で確かめる
とはいえ、自分ひとりで過去の行動を棚卸しし、4つの能力を切り分けるのは簡単ではありません。私自身、転職を検討したときに「自分がどういうタイプの営業なのか」をうまく言語化できず、苦労しました。
当サイトの診断は、まさにこの言語化のために作った無料のツールです。性格や気持ちを聞くのではなく、実際にやってきた行動・実績を聞くことで、自走力・行動量・打たれ強さ・目標達成意欲を別々の軸として可視化します。ハードスキル12軸とソフト・マインド8軸、合わせて20軸です。
主体性が高いのか、行動量が武器なのか。どちらであっても、それが分かれば「自分が輝く環境」を選ぶ判断材料になります。
まとめ
- 営業の主体性とは「指示がなくても自分で課題を見つけて動く力」であり、実行量の多さとは別のもの
- 「気合い」と呼ばれるものは、目標達成意欲・ストレス耐性・自走力・行動量という4つの別能力の混合体
- 主体性が平均的でも、行動量が武器なら組織によっては最高の戦力になる。どちらが上ということではない
- 自己評価ではなく、過去の事実・行動で確かめる
- 大事なのは能力の優劣ではなく、自分のタイプと環境の相性
自分がどちらのタイプなのか、事実ベースで確かめてみてください。