「あなたの営業としての強みは何ですか」

面接でも評価面談でも聞かれる質問ですが、うまく答えられた記憶がある人は少ないのではないでしょうか。私自身も、転職を検討したときにここで詰まりました。

結論から言うと、答えられないのは能力がないからではなく、営業の強みを表す語彙を持っていないからだと私は考えています。「コミュニケーション力」「行動力」くらいしか手持ちの言葉がなければ、そこに当てはめるしかありません。

この記事では、法人営業(B2B営業)の強みをハードスキル12軸・ソフト8軸の計20軸に分解して一覧にします。自分の強みがどこにあるのかを考えるときの、言葉のリストとして使ってください。

なぜ20に分けるのか

営業の強みは、ふつう2〜3語でまとめられてしまいます。「提案力がある」「粘り強い」——このくらいの粒度です。

ただ、この粒度だと採用でも配属でも転職でも判断を誤りやすい、というのが私の考えです。

特に問題だと感じているのが、ソフトスキル(姿勢・スタンス)の扱いです。ハードスキル(開拓・提案・クロージング等)は実績の数字である程度語れます。一方で、営業の採用ミスマッチの主な原因はソフト面にあるのに、そこは「元気そう」「熱意がある」で判断されてしまいがちです。

言語化が一番難しい領域が、一番言語化されていない。だからこそ細かく分ける必要があると考えて、20軸に整理しています。

なお、20軸は「多いほど優秀」というものではありません。全部が高い人はまずいませんし、その必要もありません。どこが高いかの組み合わせが、その人の型です。

ハードスキル12軸|「できること」の一覧

商談のプロセスに沿って並べています。自分がどの局面で成果を出してきたかを思い出しながら読んでみてください。

# 強み 中身
1 開拓力 ゼロから新規商談を生む
2 関係構築力 信頼・共感で長くつながる
3 ヒアリング・質問力 商談前半で相手の課題を引き出す
4 提案ロジック力 課題を構造化し、筋の通った提案を組む
5 プレゼン・場の支配力 大人数・役員前でのピッチ。場を握る
6 意思決定者・稟議攻略力 複数の意思決定者・購買プロセス・キーマンの攻略
7 交渉力 値引き・条件・調達部門への対応
8 クロージング力 意思決定者を動かし、取り切る技術
9 仕組み化力 売れる型・資料・プロセスをつくる
10 課題解決・伴走力 導入後まで顧客の成果に伴走する
11 ツール活用力 SFA/CRMや生成AIなどを使いこなす
12 顧客解像度 特定業界・顧客への深い理解

法人営業に特有なのが「6. 意思決定者・稟議攻略力」

個人向けの営業と最も違うのがここだと思います。目の前の担当者が「いいですね」と言っても、その人に決裁権がなければ受注にはなりません。誰が決めるのか、どういう順序で承認が回るのか、その道筋を設計して動かす力は、法人営業に固有の技術です。

「4. 提案ロジック力」と「11. ツール活用力」は別の能力

この2つは「デジタルに強い」「頭がいい」といった言葉でまとめられがちですが、私は明確に分けるべきだと考えています。

課題を構造化して筋の通った提案を組める人と、SFAや生成AIを使いこなして効率を上げられる人は、別の人であることが普通です。片方だけを見て「この人は優秀」と判断すると、配属してから噛み合わないことが起きます。

ソフト・マインド8軸|「姿勢」の一覧

ここが、本サービスで最も重視している領域です。

# 強み 中身
1 目標達成意欲 KPIを何としても達成する執着・やり切る力
2 ストレス耐性・打たれ強さ 拒絶・プレッシャー・きつい環境への精神的タフさ
3 自走力・主体性 指示がなくても自分で課題を見つけ動く
4 行動量・推進力 与えられた瞬間の実行スピード・量
5 巻き込み・社内調整力 自社側のリソース・上司・他部署を動かす
6 マネジメント・ヨミ管理力 ヨミを詰める・数値で人を動かす・メンバーを育てる
7 学習・適応力 新しい領域・商材への素早いキャッチアップ
8 誠実さ・顧客本位 短期の数字より長期の信頼を取る姿勢

「気合いがある」は、4つの別物の混合体

上の1〜4を見てください。現場では、この4つがまとめて「気合いがある」「熱量がある」と呼ばれています。

私は、分解しない精神論は害になると考えています。精神論そのものを否定はしませんが、1〜4はまったく別の能力で、しかも別々に高低がありえるからです。

たとえば、指示があれば誰より頑張る人(4の行動量が高く、3の自走力は平均的)は実在します。この人は自走を前提とする組織では苦戦しますが、売る型が確立された組織では最高の戦力になります。「主体性がない人」とひと括りにしてしまうと、この違いが見えません。

この取り違えは転職のミスマッチに直結するので、別記事で詳しく整理しています。

営業の「主体性」とは何か|指示があれば頑張る人との違い

「5. 巻き込み・社内調整力」は社外ではなく社内向け

見落とされやすい軸です。顧客との関係構築(ハードの2)とは別で、自社の上司・他部署・開発チームを動かす力を指します。

法人営業では、案件を進めるために社内を動かす場面が頻繁にあります。ここが強い人は、一人で完結する営業よりも、組織を巻き込んで大きな案件を通すタイプです。

20軸をどう使うか

一覧を眺めるだけでは、あまり意味がありません。使い方は3つあると考えています。

1. 棚卸しの語彙として使う

自分の実績を思い出しながら、「これはどの軸の話だろう」と当てはめていきます。言葉があると、思い出せる経験の量が増えます。「コミュニケーション力」しか語彙がないと、そこに入らない経験は記憶から落ちてしまいます。

2. 強みの言語化に使う

面接や職務経歴書で「提案力があります」と書くより、「課題を構造化して提案を組み立てること(提案ロジック力)に強みがあり、一方でツールを使った効率化はこれから伸ばしたい」と言えるほうが、はるかに具体的です。

抽象語を、より細かい語彙に置き換えるだけで、伝わり方が変わります。

3. 環境選びに使う

これが最も重要な使い道かもしれません。強みが高い・低いより、その強みが評価される環境にいるかどうかのほうが、成果を大きく左右します

仕組み化力が高い人が、個人プレー中心で「型なんて要らない」という文化の組織にいれば、その強みは評価されません。逆に、開拓力が高い人が既存顧客の深耕しかない環境にいれば、持ち味が出せません。

「営業」とひと括りにされることで、この相性の問題が見えなくなっている——そこが、私がこのテーマに取り組んでいる理由です。

自分の20軸を確かめる

とはいえ、一覧を見て「自分はこれとこれが高いと思う」と自己申告しても、実態とはずれます。自己評価は高く出る人も低く出る人もいて、あてになりません。

当サイト「営業の通信簿」は、この20軸を事実・行動ベースで測る無料の診断です。「〜だと思いますか」という気持ちの質問ではなく、実際にやってきたことを聞くことで、20軸それぞれの高低を可視化します。

結果画面では、レーダーチャートで全体像を見たうえで、強みTOP5について「あなたの場合どう強いのか」の解説まで表示されます。この記事の一覧が「地図」だとすれば、診断は「あなたの現在地」にあたります。

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まとめ

  • 強みを語れないのは能力の問題ではなく、語彙の問題であることが多い
  • 法人営業の強みは、ハードスキル12軸(できること)とソフト・マインド8軸(姿勢)に分解できる
  • 特にソフト面は言語化が難しく、一番言語化されていない。「気合い」は4つの別物の混合体
  • 「提案ロジック」と「ツール活用」、「顧客との関係構築」と「社内の巻き込み」など、混同されやすい組み合わせがある
  • 20軸は多いほど良いのではなく、どこが高いかの組み合わせが自分の型
  • 一番大事なのは高低ではなく、その強みが評価される環境にいるかどうか

まずは一覧を眺めて、思い当たる経験を書き出すところから始めてみてください。

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