営業を数年やってきて、ふと「この先どうなるんだろう」と考える。マネージャーになるのか、ずっとプレイヤーなのか、それとも別の職種に移るのか——具体的な選択肢が見えないまま、なんとなく不安だけがある。そういう状態で検索した方が多いのではないかと思います。

先に立場を書いておきます。私自身も現役の営業プレイヤーで、この問いに悩んでいる当事者です。 マネジメントや営業企画に関わった経験は多少ありますが、答えを持っている側として書くことはできません。

この記事で書けるのは、選択肢を分けて整理することと、実際に見てきた範囲での傾向までです。そのうえで、最後に「どの道が自分に向くか」を判断するための材料に触れます。

営業の先にある道は、大きく5つ

まず選択肢を並べます。

中身
プレイヤー継続 現場で売り続ける。専門性や単価を上げていく
営業マネージャー → 事業部長 チームの成果に責任を持ち、いずれ事業全体を見る
営業企画・イネーブルメント 売れる型・仕組みをつくり、組織全体の成果を上げる
カスタマーサクセス(CS) 受注後の活用・継続に軸足を移す
異職種・起業 営業経験を土台に別の領域へ

漠然と悩んでいるときは、この5つのどれを検討しているのかすら曖昧なことが多いと思います。まず分けるだけでも、考えやすくなります。

事業部長・役員を目指すなら、営業のライン上を進むのが王道

これは私の偏見ですが、もし事業部長や役員になりたいのなら、次のパスは実際にあると思います。

  1. 営業(FS)でプレイヤーとしてしっかり成果を出す
  2. 営業マネージャーとして、チーム全体での成果を出す
  3. 事業全体の売上アップを任される事業部長になる

身も蓋もない言い方になりますが、事業を伸ばすうえで営業はとても大事なので、この傾向は比較的リアルにあると感じています。

営業しか積んでいないことのデメリットもある

もちろん、いいことばかりではありません。営業経験しか積んでいないと、CS観点が軽視されがちです。受注を優先するあまり導入後の顧客対応が疎かになり、解約が多くなってしまう——といったことは起こりえます。

このデメリットは自覚しておいたほうがいいと思います。逆に言えば、営業のライン上を進む人ほど、CS側の視点を意識的に取りに行く価値があるということでもあります。

営業企画・CSから事業部長になる人は、比較的レアかもしれない

一方で、営業から営業企画・イネーブルメント側やCS側に移って、そこから事業部長・本部長レイヤーに昇進する人は、比較的レアなのかもしれません。少なくとも私はあまり聞いたことがありません。もちろん実例はあるのだろうと思います。

ただし例外もあります。組織が大きくなるほど、仕組み改善の効果はもろに出ます。 「個人としての営業はそんなに得意ではなさそうだが、数値管理などの仕組みを徹底的に組織に根付かせてCOOとして成果を残す」——そういう話は聞いたことがあります。

つまり、組織の規模とフェーズによって、どのルートが効くかは変わるということだと思います。

営業企画・イネーブルメントに向く人

5つのうち、意外と情報が少ないのが営業企画です。ここは自分の関心領域でもあるので、少し詳しく書きます。

俯瞰的にものを見るのが好きな人

向いているのは、俯瞰的にものを見るのが好きな人・得意な人だと思います。

個々の営業活動に目を向ける視点も時に必要ですが、それ以上に——自分が担当する製品の市場全体がどうなっていて、顧客はどういう人で何に困っていて、競合はどうで、いまの自社の状況(販売状況や売り方など)がどうで、どうすべきか。ここを描ける人です。

現場の商談を回すのが好きな人と、この全体像を描くのが好きな人は、けっこう別だと感じています。どちらが上ということではありません。

「絵空事」で終わらせないこと

ただし、計画を立てるだけで実行に落とせないと、現場から「絵空事」と言われて終わります。しっかり組織を巻き込んで完遂できることが重要です。

そのためには、現場と良い関係性を保つことが要ります。営業企画の人が偉そうに現場の営業へ指示をしても、関係値が悪かったら動いてくれません。やっぱり人なので。 かといって、お伺いを立てるくらいの腰の低さもよくはないと思います。

だから、マネジメントサイドがやったほうがワークしやすい

ここから導かれるのは、営業企画の仕事は、プレイヤーにやってもらうよりマネジメントサイドがやったほうがワークしやすいということです。

同じプレイヤー同士のレイヤーで「営業 → 営業企画」「営業企画 → 営業」とやり合うと、消耗しやすいかもしれません。指示する側とされる側が同格だと、話が進まないからです。

営業企画に興味がある人は、この「どのレイヤーでやるか」も一緒に考えておくと、入ってからのギャップが減ると思います。

マネジメントに進むか、プレイヤーで伸ばすか

ここは正直に書きます。これは難しい問いで、私も日々悩んでいます。答えを持っていません。

一つだけ分かっているのは、部下がどういうタイプの人かにもよるということです。

  • 部下が自分でどんどん動いてくれる人ならば、マネジメントとしては楽です
  • 逆ならば、どんなに働きかけても暖簾に腕押しのような状態になるので、苦労します

つまり、マネジメントに向くかどうかは、自分の資質だけで決まる話ではないということです。同じ人がマネージャーをやっても、メンバーの構成が違えば結果は変わります。

自走が前提の組織に、指示がないと動けない人が入ってしまい、双方が消耗する——というケースを見たことがあります。あのとき苦労していたのはメンバー側だけではなく、マネージャー側も同じでした。どちらにも悪意はないのに噛み合わない。マネージャー側の適性の話も、結局はタイプの組み合わせの話に落ちるのだと思います。

「マネジメントが向いていなかった」と感じたことがある人は、それが本当に自分の適性の問題だったのか、一度分けて考えてみる価値があると思います。この切り分けについては営業に向いてない、と感じたときの記事でも整理しました。

組織体制によって、キャリアの積み方は変わる

もう一つ、見落とされがちな観点があります。自分がいる組織が分業型なのか、一気通貫型なのかです。

分業(The Model型)の場合

日本でBtoBマーケが盛り上がり始めた頃、マーケ/IS/FS/CSに役割を分けるThe Model型の組織が注目され、取り入れる企業も増えました。その後「意外と微妙じゃないか」という言説も出てきています。分業しすぎるあまり、それぞれが個別最適化されたKPIを追い、組織の連携が弱くなる、という指摘です。これに対しては「そもそも解釈が間違っていて、正しく踏襲できていないだけだ」という反論もありました。

私自身は、良し悪しは前提条件によって諸々変わると考えていて、一律に良い・悪いとは言えないと思っています。

キャリアの観点で言うと、分業組織ではISがFSになるための練習として扱われがち、というあるあるがあります。実際、IS段階での提案やヒアリングは、FSに比べると情報量・密度の観点で低くなりやすい。電話・メール・手紙に比べ、FSは訪問して大勢の前でプレゼンをするなど、よりスキルが求められるのは正直なところとしてあると思います。

ただし、ISを軽視してよいわけではもちろんありません。 キャリア上も給料も相対的に安く見られてしまう組織もあるでしょうが、ISがいるから商談が供給されるというリスペクトは忘れないほうがいいと思っています。ISがいなければ、FSは日々の案件対応に加えて商談獲得も自分でやることになり、より大変になります。

なお、他社の話で「これは良い」と思ったのは、マーケと営業(IS/FS)を管掌する部長が同じである体制です。別々だと「マーケがとってきたリードはコールドリードばかりで商談にならない」「せっかくリードを供給したのに受注につなげてくれない」という応酬になりがちです。両方を見る本部長がいれば全体最適な判断がしやすくなり、「商材自体のターゲットが少ないのだから、WEB広告はやめよう」といった意思決定もできます。

一気通貫の場合

一方で、IS → FS → CS までを一人で担う体制もあります。私が現在働いているのはこちらです。

分業組織の解説はよく見かけますが、一気通貫側の実感はあまり語られないので、書いておきます。一番大きいのは、CSで得た情報がFS段階で効くことです。

CSのタイミングでは、お客様から細かい実務的な質問をよく受けます。この機能が便利、ここが困っている、こういう具体的な解決策がほしい——こうした声を自分で受け取っていると、FS段階の商談でその粒度まで説明できるようになります。導入後のサポートまで詳しく話せるので、お客様にも安心してもらえる。

そうなると、**FSがただの売り込みではなく、コンサルティング営業のような働き(顧客の課題解決)**に近づきます。分業していると、この情報はCS部門の中に留まりがちです。

逆に言えば、分業組織にいる人ほど、CS側の声を意識的に取りに行く価値があるということでもあります。この「相手の実務まで降りたインプット」が商談でどう効くかは、営業のヒアリングのコツの記事で詳しく書きました。

一気通貫のしんどい面も書いておく

良いことばかり書いても仕方がないので、実感としてのしんどさも書きます。キャリアを考えるうえでは、こちらのほうが重要かもしれません。

1つ目は、評価がFSとしての働きに偏りやすいことです。

評価制度がどれだけしっかりしているかは組織によりますが、私の個人的な感覚では、一気通貫で働いていると評価されるのはFSの部分に寄ります。

  • CS:いくらお客様に尽くしても、製品都合や先方事情で解約になってしまえば、評価対象にもなりません。継続契約になれば売上になるので、そこは報われます
  • IS:売上からやや遠いため(まず商談が必要)、こちらも評価はされづらい

これは誰かが悪いという話ではなく、評価が「成果」よりも「売上との距離」で決まりやすいという構造の話だと思っています。私自身はFSとして成果を出せているので個人として困ってはいませんが、同じ量の労力でも、どの段階に注いだかで評価が変わるのは事実です。

分業組織であれば、CSにはCSの、ISにはISの評価指標が設計されます。一気通貫はその設計を持ちにくい。ここは分業組織のほうが公平になりやすい面だと思います。

2つ目は、時間配分です。これは率直に大変です。

FSで成果を出そうと思えば、顧客と接する時間・顧客対応の時間が何より大事になります。しっかり訪問する、メール対応をちゃんとする、稟議サポートのための資料を用意する・記入を手伝う——挙げていけばいくらでもあります。

一気通貫だと、この時間をIS業務・CS業務と取り合うことになります。どれも手を抜けないので、単純に時間が足りません。毎回決まりきった調べものを仕組み化したくなるのは、こういう事情からです。

役割の切り替えは、意外と負担ではなかった

一方で、よく懸念される「役割の切り替え」は、私個人は平気でした。

理由は単純で、そもそも意識として切り替えていないからです。営業段階からコンサル営業のように顧客の課題解決のための商品提案をして、受注してCS段階になったら実運用をしっかり提案・サポートする。それだけです。

「役割が変わる」というより、顧客の課題解決という一つの仕事の、段階が進んでいるだけという捉え方をしています。もちろん、ここは人によって負担の感じ方が違うと思います。

なお、分業と一気通貫でキャリアの積み方がどう違うのかについては、正直なところ私も比較して語れるだけの材料を持っていません。どちらが良いという話ではなく、自分が今どちらにいるかで、身につくものと評価のされ方が変わるという程度に捉えておくのがよいと思います。

AIで変わる部分と、残る部分

キャリアを考えるうえで、この観点も外せなくなりました。

私は、営業経験は、会社を辞めて起業したとしても絶対に役立つと思っています。そして、生成AIに置き換えられづらい仕事でもあると考えています。目の前の相手と信頼をつくり、複数の意思決定者を動かす仕事は、そう簡単に代替されません。

一方で、正直に書くと、IS業務は生成AIに置き換えられる可能性があるはずです。顧客情報に基づいたカスタマイズされたメール送信は、すでにできてしまいます。人間の声に近いAI音声での電話、まったくラグのない電話対応なども、今後より実用性に近づくでしょう。もうすでに実用で動いている組織もあるかもしれません。

これは「ISのキャリアに価値がない」という意味ではまったくありません。ただ、どの業務が代替されやすいかを踏まえてキャリアを組むという視点は、持っておいて損はないと思います。

道を選ぶ前に、自分の型を知る

ここまで選択肢を整理してきましたが、最後に前提の話をします。

どの道が自分に向くかは、自分がどういうタイプの営業なのかを知らないと判断できません。

俯瞰的に全体像を描くのが好きなら営業企画が向くかもしれない。目の前の相手と関係を深めるのが強みなら、プレイヤーやCSで力を発揮するかもしれない。決め所で取り切る力が武器なら、それを活かせる環境が別にあるかもしれない。同じ「営業」でも、伸ばすべき方向は人によって全く違います。

私自身、転職を検討したときに「自分がどういうタイプの営業なのか」をうまく言語化できず、苦労しました。当サイト「営業の通信簿」は、その反省から作った無料の診断です。性格や気持ちを聞くのではなく、実際にやってきた行動・実績を聞くことで、ハードスキル12軸・ソフト8軸の計20軸から強みを特定し、7つのタイプのどれに近いかと、輝く環境を提示します(20軸の全体像は法人営業の強み一覧の記事で解説しています)。

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まとめ

  • 営業の先にある道は大きく5つ——プレイヤー継続/営業マネージャー→事業部長/営業企画・イネーブルメント/CS/異職種・起業
  • 事業部長・役員を目指すなら、FSで成果 → 営業マネージャー → 事業部長というライン上のパスは実際にある。ただしCS観点が軽視されがちというデメリットは自覚しておく
  • 営業企画・CSから事業部長になる人は比較的レアかもしれない。ただし組織が大きいほど仕組み改善の効果は出る
  • 営業企画に向くのは俯瞰的にものを見るのが好きな人。「絵空事」で終わらせず、現場と良い関係を保って完遂できること。プレイヤーよりマネジメントサイドがやったほうがワークしやすい
  • マネジメント適性は自分の資質だけで決まらない。部下のタイプとの組み合わせで結果が変わる(ここは私も答えを持っていません)
  • 分業組織か一気通貫かで、身につくものと評価のされ方が変わる。一気通貫はCSの情報がFS段階で効きコンサルティング営業に近づく一方、評価はFSの働きに偏りやすく、時間配分も大変
  • 営業経験は起業でも役立ち、AIに置き換えられづらい。一方でIS業務は代替される可能性がある
  • どの道が向くかは、自分がどういうタイプの営業かを知らないと判断できない

冒頭に書いたとおり、私もこの問いの当事者で、正解を持っているわけではありません。ただ、選択肢を分けて、自分の型と照らすところまでは、今からでもできると思います。

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